岡山県出身。コロンビア大学大学院博士課程修了。応用言語学専攻。専門は認知意味論、言語習得。慶應義塾大学名誉教授。PEN言語教育サービス代表。英語教育の実践に根ざした言語論、コミュニケーション論を展開。また、国際協力機構(JICA、旧国際協力事業団)において長年、海外派遣される専門家のための英語研修を担当。最新の著書に『コアで攻略する英単語の教科書』(Gakken, 2024)、『コアで攻略する英文法の教科書』(Gakken, 2024)など。
(一人ひとりに息づく英語)
「レシピー」には学習者の英語レベルや、どんな話題に興味があるのかなどをAIで個別最適化して学習素材を提供する「My Recipe(マイ・レシピ)」という機能がありますね。自分にあった英語を身につけるための「私のレシピ」が提供される。奇しくも「My」という言葉がついているように、これはまさに「My English」を育てていくのにうってつけの機能だと思います。
「レシピー」では「語彙」「文法」「リスニング」「リーディング」「スピーキング」「ライティング」を「6技能」と呼んで、これをオールインワンで学習できますよね。この捉え方はとても面白いと思います。言語学の観点からより正確に言うと、「語彙」と「文法」はリソース(素材)で、「リスニング」「リーディング」「スピーキング」「ライティング」はドメイン(領域)と言ったりします。つまり「語彙」「文法」と言う「駒(コマ)」と「ルール」を使って、4つの領域(「リスニング」「リーディング」「スピーキング」「ライティング」)の中で、それぞれ「タスク」を実行するイメージです。英語力と言うのはこの「タスク」をこなしていく力と言えます。「レシピー」では、この2つのリソースを使うために、AIを利用して4つの領域から個々人に合ったコンテンツを提供する仕組みが考えられていると感じました。
(英語学習の友)として
よく「使える英語を身につける」、なんていうことが言われます。今はもっとステージが進んでいて、「使える英語」から「アクションとしての英語」を身につけることが大事になってきています。「アクションとしての英語」とは、英語をただ「使う」のではなく「どう使うか」にフォーカスし、究極的には、生物多様性の消失や、貧困問題などのような「今の地球全体で起こっているさまざまな課題」に英語を使って関わっていくということです。このような喫緊の課題にアプローチするには、英語は使えるようになるまで「勉強」するもの、と言う考えから脱却し、最初から「使う」ことを意識しなくてはなりません。いつまでも「学習者」でいてはいけない、英語をいつまでも「憧れの言語」にしてはいけないということですね。「今、ここ、私」が重要なんです。テクノロジーを使っての英語学習にはこのようなことを解決するポテンシャルがあります。同時代性の高いさまざまなニュースを素材にスピーキングやライティングを行い、それに対するフィードバックが得られる「レシピー」はまさに「これからの英語学習」を体現する学習アプリだと思います。
3つのポイント
皆が同じ素材で一律に学んでいた事態を経て、これからの英語学習の潮流は、「一人ひとりに息づく英語力」つまり「My English(マイ・イングリッシュ)」になりつつあります。学習者の英語レベルや、どんな話題に興味があるのかなどをAIで個別最適化して学習素材を提供する「レシピー」は、まさにそんな時代を象徴する良質な英語学習アプリと言えます。
一人では確かな英語力を身につけることは困難です。英語の環境に晒され、自分ごととして使う環境に置かれることが理想で、その環境の中でフィードバックを得られる「他者」の存在が不可欠です。「英語力を上げるための環境」をAIで創出できる「レシピー」は、皆さんのLanguage Companion(英語学習の友)となってくれるでしょう。
同時代性の高いニュースなどで、今地球全体で起こっている課題に触れ、考えたことをスピーキングやライティングタスクの中で「自分ごと」として使い、そのフィードバックを得られます。「レシピー」を通して、「学習者」を脱却し、「表現者」としての自分を作りあげることができます。